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不自由なく暮らしてきた。
昔から続く大地主の家系に生まれた僕は、金に苦労した経験なんてない。
それが当然であったし、当たり前だった。
今もそれは変わらない。
しかし、それはそれでとても退屈なものだ。
100年以上の歴史を持つマンモス校を営む僕の家系。
当然そこに入った僕は、ありきたりな幼稚園生活を送った。
さて、そこで友人たちを見ながら僕は考えた。
何をどうすれば、この面白みのない生活を変えられるのかと。
一通り観察しながら、僕はある一点に気づく。
泣くもの。
笑うもの。
怒るもの。
悲しむもの。
喜怒哀楽。
それは知っている。
けれどそこにいる子供達は皆、そんな言葉には閉じ込められない感情を見せていた。
泣くにもたくさんの泣くがあること。
笑うにもたくさんの笑いがあること。
感情は一つだけではない、そしてそれに伴う表現も多種多様。
僕は観察を続ける。
子供の反応、大人の反応、人々の表情、言動、その他諸々。
そしてその後に見るのは、木々、虫たち、動物たち、生き物たち。
人を比べ、その他を比べ。
僕はここに高揚感を求めるようになった。
そうして小学校に上がる頃、僕はある一つの夢を描くようになった。
人とは何か。
人と他の動物の違いとは何か。
何が人に感情を与え、何が人に影響し、何が人を人と成り立たせるのか。
表情、意識、知識、感情、脳、身体、心、人となるすべての要素。
調べたい、調べてみたい、解明してみたい。
僕の何もかもで、人という生き物を調べつくしてみたい。
僕は夢を描いた。
その翌年、政財界にも名を馳せていた祖父が亡くなり。
全てを継いだ甘い父は、僕に惜しみない、金、という力をくれた。
僕は実行することにした。
人を調べるという場所を作ること。
大っぴらに出来ることは数少ないが、人材を集めるのに適した場所ならすでに手の中だ。
学校。
幼子から社会人になるまでの、人間が出来る一番大切な課程を過ごす場所。
一人一人、全てを調べてやりたい。
研究し尽くしてやりたい。
素晴らしい人材を大量に集め、それらをすべて見尽くしてやりたい。
ああ、なんて面白そうなことだろう。
退屈だろうと感じたこれからの人生は、途端に色を変えたのだ。
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地鳴りのようなもの凄い揺れと音。
それと共に職員室の天井が歪み、一気にひびが入った。
ばらばらとコンクリートが降ってくる。
(;^ω^)「ツン!!」
ξ;>⊿<)ξ 「きゃあああ!!」
(;'A`)「は、端に逃げろ!急げ!」
(;,,゚Д゚)「しぃ!!」
(;^ω^)「ギコ先輩、危ないですお!!」
揺れの激しさであまり身動きが出来ない中、ギコが駆け出そうとするのをブーンは慌てて止めた。
兄者の手当ての為に部屋の中央近くに移動していたしぃは、兄者と共に弟者の腕の中だ。
(´<_`;)「…クソっ…!」
弟者は天井を見上げながら舌打ちする。
二人を抱えながらこの揺れの中走るのは困難だと、瞬時に悟った。
とにかく走る。
弟者は体勢を変えると、思い切り床を蹴った。
***
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