職員室はVIP高校1号棟の3階に位置している。
保健室を出て、校庭から入ってきた正面玄関の方向に戻る途中、左側にある階段を上がる。
3階についてから左手に曲がり、少し歩くと職員室にたどり着く。
さほどの距離はないので、あの黒い靄を体につけた人にも出くわさずに来れた。
( ,,゚Д゚) 「…ふむ…」
ドアに付いた小さな窓から、ギコが中の様子を探る。
(*゚-゚)「どう?ギコ君」
( ,,゚Д゚) 「誰もいないようだな」
( ^ω^)「ですかお…」
化け物に会わずに済んだ安堵と、無事な人に会えなかった落胆。
一様に口を引き結んだ所で、先頭を行くギコが職員室のドアを開けた。
中はしんと静まり返っている。
壁に掛けられた時計を見ればすでに8時半を回っており、普段であればホームルームが終わる時間帯だ。
この時間の職員室であれば、1時間目の授業の準備をする先生達でごった返している筈である。
普通とは違う空間に、全員が声を出さずに中に入った。
一番最後に入った弟者は、警戒するように廊下の左右を確認してから、そのドアを閉める。
( ´_ゝ`)「…さてと」
数秒して、最初に小さく声を出したのは兄者だ。
きょろりと辺りを見回すと、部屋の隅に置かれたテレビに目をやる。
ξ゚⊿゚)ξ「あった!」
( ^ω^)「早速つけてみるお」
('A`)「電気が通ってればいいけど…」
職員室の奥に移動して、室内に一つだけ置かれた然程大きくないテレビの前に立つ。
ブーンが、青い炎を纏った指でぽちりと脇の電源を押した。
一瞬の電子音を響かせて、テレビは正常に作動する。
(*゚ー゚) 「よかった、動いたわね」
( ,,゚Д゚) 「…動いた、が…」
(;'A`)「…」
(;^ω^)「…」
ξ;゚⊿゚)ξ「な、にこれ…」
テレビに映し出されていたのは、ニュース映像だ。
取材ヘリコプターが上空から撮影しているようで、そこには町並みが広がっている。
よく見知った、町並みが。
(´<_` )「…VIP町か」
彼らが住む、町の上空。
けたたましいヘリの音に負けじと、リポーターの男性が声を張り上げて伝えてくるその内容は。
『ご覧下さい、現在のVIP町の様子です!!』
一部で燃え上がる住宅やビル。
黒い煙を吐き出しながら、隣の建物に更に燃え広がる。
その建物の隙間に見えるのは、黒い靄を体に纏わせ、徘徊する人々。
よろよろと揺れながら、何かを求めてさまよっているかのように。
『信じられない光景です…!!』
誰も信じられないだろう。
信じたくもないだろう。
昨日まで何の変哲もない生活を営んでいた町が、たった一夜でこの様相だなどと。
『現在、警察機動隊、自衛隊等がVIP町を包囲し、行き来は規制されている模様です!』
張り上げる声は緊迫している。
『一部区間では、警察官数名が負傷しているとの情報もあり…』
( ´_ゝ`)「…」
『VIP町の警察関連所と連絡がまったく取れていないとの話も…』
(´<_` )「やはり、警察はもう機能していないようだな」
(;^ω^)「…何で、こんなんなっちゃったんだお…」
Σ('A`)「……!」
食い入るように画面を見ていたドクオの表情が突然変わった。
::(;'A`)::「…っ」
かたかたと震えているが、全員画面に意識を集中していたためにその変化に気づかない。
下唇を噛む。
と。
(;^ω^)「…?」
ブーンの耳が、何か小さな音を拾った。
こんこん、こんこん、と。
何かを叩くような音だ。
音の出所を探るように、首を少しだけ右に向ける。
こんこん。
こんこん。
弟者が閉めた、ドアからだ。
すぐに脱出できるよう、鍵は閉まっていない。
入ろうと思えば入れるドアを、誰かがノックしている。
(;^ω^)「…お…?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン?」
ツンがブーンの様子に気づくと、つられる様にそのドアを見て。
こんこん。
こんこん。
その場の全員が気づいた。
ギコと弟者が目配せをし、剣と槍を構え、音を立てないようにドアへと近づいていく。
ブーンもそれに続き、3人がドアの前に陣取る。
後ろでは兄者とドクオが、しぃとツンを教員の机の脇に隠して。
ドアを開けられる場所にギコが、反対側の位置に弟者が、後方との中間地点に、ブーンが着く。
( ,,゚Д゚) 「…」
入ってきた時と同様に、ギコはドアの上部に付けられた飾り窓から少しだけ顔をのぞかせる。
( ,,゚Д゚) 「…?」
いない。
誰もいない。
だが、触れないようにしているドアからは、尚も、こんこん、と音がする。
それは下の方から。
若干背伸びをして、上から更に覗き込む。
何かがいる。
***
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