(゚<_゚ #)「このまま、顔ぐしゃぐしゃになるまで踏み潰してやろうか?
ええ?おい。その黒いのごと、ぐしゃぐしゃになあ?
安心しろよ、原型なんて留めないくらいにしてやるから。
脳みその皺も確認出来ないくらいにだ、ありがたく思え」
(;´_ゝ`)「お、弟者…
それ何を安心して、何をありがたく思ったら、いいんだ…」
グロいからやめてくれ。
咳き込みながら懇願すると、盛大な舌打ちをして、ようやく弟者は相手の
顔から足を退けた。
ついでとばかりに、脇腹に一発蹴りをいれて数度転がす。
ギイ、と黒い靄が悲鳴を上げて、男は動かなくなった。
(´<_`#)「死ねばいいのに」
(;´_ゝ`)「お兄ちゃん、あんまりそういうの好かないわ」
(´<_`#)「好く好かないの問題じゃないね。
ああクソ、マジで胸糞悪い、死ねクソ野郎が」
(;´_ゝ`)「くそくそ言うんじゃありません」
普段そこまで怒ることのない弟者だが、兄者関連での沸点はすこぶる低い。
一旦切れると、それはもうドン引きするくらいに口が悪くなる上、
すぐに手が出るから始末が悪いのだ。
しかもこの状態を止められるのは、兄者のみである。
全くもって、始末が悪い。
(;´_ゝ`)「どーどー、弟者。落ち着け。もう平気だから」
(´<_` )「…怪我は」
( ´_ゝ`)「してない。ちょっと背中打ったくらいだよ」
(´<_` )「背中か。よし。もう10発ぶち込んでくる」
(;´_ゝ`)つ「やめなさい!!」
尚も行こうとする弟者の服を引っ張って止めた。
またも舌打ちをした弟者に、何でこうも極端なのかと、兄者は息をつく。
弟者が愛用している棍を、脇に抱え直した。
(´<_` )「…家は?」
大丈夫なのかと、言外に含んだ問いを兄者に投げかける。
( ´_ゝ`)「チートがいる」
(´<_`;)「愚問だったな」
自らの母の顔を思い浮かべ、弟者は苦笑いを浮かべた。
(´<_` )「つか、何で家にいなかったんだよ」
( ´_ゝ`)「あー…いやほら、つい…」
(´<_` )「…」
( ´_ゝ`)「…」
(´<_`#)「自分の身の安全を確保してから来い、この馬鹿兄者」
(;´_ゝ`)「すんまっせん」
(´<_` )「…まあ、心配してくれたんなら、それだけは礼を言うがな」
溜息混じりにそう呟く。
ようやくいつもの調子に戻った弟に小さく笑いかけて、兄者は周囲を見渡した。
( ´_ゝ`)「…なあ弟者、どうなっちゃってんだろ」
(´<_` )「兄者が分からない事が、俺に分かるとでも?」
決して頭が悪いわけではないが、兄者と比べれば天と地の差だ。
弟者はそう思っているし、兄者に敵おうとも思わないので、するりと言ってのける。
それに兄者は困ったような顔をするが、何も返さず、手で口元を押さえた。
(´<_` )「…俺が道場に着いた時には、もう皆こうなってた」
( ´ ゝ`)「…」
(´<_` )「剣道部、あと空手部、柔道部の奴らもだったな。
即効で入り口閉めたよ」
( ´_ゝ`)「校舎は?」
(´<_` )「さあ…入ってないからな。
ただこの時間だから、人はあんまりいないんじゃないか」
( ´_ゝ`)「うん。外よりも比較的安全かもしれない」
(´<_` )「了解」
街中には黒い靄を持つ人々が犇いているので、安全を確保するのは難しい。
校舎の中に入って、暫く様子を見ようという事のようだ。
(´<_` )「歩けるか?」
( ´_ゝ`)「へーき」
(´<_` )「おぶろうか」
(;´_ゝ`)「へーきだっつのに、この過保護め」
疲れてはいるが、怪我をしたわけでも具合が悪いわけでもない。
兄者は申し出を断ると、弟者を連れて歩き出した。
角を曲がれば大通りに出る。
そこを直進すれば、学校が見えてくるはずだ。
けれども。
(;´_ゝ`)「うおぉっげええ!?」
(´<_`;)「…っかしーな、さっきまでいなかったんだけど」
こちらを睨む、大観衆。
ざっと見、数十人。
全員身体に、黒い靄が。
(;´_ゝ`)「別の道行く!!裏手門はこの時間空いてないから、
その脇の小さな道、あそこ通って、正門に出る!」
(´<_`;)「へいへい!」
疲れて重い足の分を補充するように、弟者が兄者の腕を引っ張って先導する。
追ってくる人々を振り切るように、2人は全速力で駆け出した。
***
(;´_ゝ`)「は、はっ…!まじで、バイオ、だな…っ」
(´<_` )「エイダが出てこないバイオなんて願い下げだな」
(;´_ゝ`)「おま、知ってる?エイダ、6でもう、30代後半、だぞ…っ!」
Σ(´<_` )「マジで」
軽口の応酬をしている場合でないことは分かっている。
それでも兄弟は走りながら喋った。
(;´_ゝ`)「タイラントとか、出てきたり、して」
(´<_` )「ロケラン持ってきてねえわ」
(;´_ゝ`)「ナイフしばり、で、っぜぇ…いけない、かなっ…?」
(´<_`#)「時間かかるだろ、っと!邪魔!!」
弟者が右手に持った棍を振るう。
前から迫ってきていた、黒い靄を被る女性の脇腹に、容赦なくぶち込んだ。
うめき声を上げて、女性は横に吹っ飛ぶ。
狭い道だ、すぐ傍にあった塀に身体を打ちつけ、女性はずるりと崩れた。
(;´_ゝ`)「おま、女性はな、もっと、丁寧に…はぁ、ぜぇ…」
(´<_` )「暴力的な女性嫌いなんで」
(;´_ゝ`)「っ…エイダは、結構…好戦的…は、はぁ、っ…!」
兄者の足は、確実に遅くなっている。
元来身体が弱い彼にとって、持久走のようなこの行為は一番難しい運動だ。
左手で掴んでいた兄者の腕は弟者の腕の半分くらいの細さしかない。
力を入れすぎればすぐにでも折れそうな、そんなひ弱な兄の腕を
弟者は若干乱暴に自分の方に引き寄せた。
(´<_` )「兄者、やっぱ背負うからな」
(;´_ゝ`)「だめ」
(´<_`;)「何でだよ!」
(;´_ゝ`)「俺なんか、担いでみろ。一気に、お前、動きにくく、なるわ」
頑として譲らない兄者に、弟者が眉根を寄せた。
(´<_`;)「だけどなぁ!」
Σ(;´_ゝ`)「前!!弟者、前!!」
(´<_` )「あ?」
曲がり角からぬっと出てきた腕。
3本ほどあるそれを、弟者は屈んで避ける。
(´<_`#)「邪魔って言ってんだろ!!」
一瞬兄者の腕から手を離し、屈んだ不安定の体勢のまま、棍を地面に突き立てた。
それを軸に、身体を逸らしながら伸ばし右足を真上に振り上げる。
ばしりという音がして、こちら側に伸ばされた腕は角から見えなくなった。
地面に接していた棍を、おろしてきた右足の踵でがつりと持ち上げると、
通常に腕で持ち直すよりも勢いを増して、棍は弟者の手の中で一周する。
(;´_ゝ`)「ウェイっ!?」
左の手で、兄者の頭を押した。
頭を下げさせた状態にすると、弟者の持つ棍は勢いをつけたまま、今度は真後ろへと振られた。
棍は、後方から来ていた男性にの横っ面を思い切り打ち付ける。
真横に流れたそれは、兄者が立っていた場所を通過して。
また弟者の手の中で回ってから、定位置である脇へと戻った。
(´<_`#)「マジでぶち殺してぇんだけど」
後ろから来ていた男性の手が、兄者に伸びたのがいけなかったらしい。
弟者の機嫌はまたも下降気味だ。
(;´_ゝ`)「……はぁ…」
兄者は整わない息を直す暇も無く、よろりと立ち上がる。
(;´_ゝ`)「も、少しで、裏門だから…そこまでは…」
歩こうと、一歩踏み出す、はずが。
( ´_ゝ`)「…あ、れ?」
出ない。
足のすぐ横にあるマンホールの蓋が、ずれている。
そこから伸びる左腕。
それは兄者の足を捕らえていた。
隙間から見えるのは黒い靄。
聞こえるのは、ギィギィという、不快な音。
(;´_ゝ`)「な、んで…こんな、とこから…」
兄者の表情が、引きつった笑いのまま固まる。
(´<_`#)「兄者!!」
弟者が、棍をマンホールの隙間から中に突き立てようと持ち直す。
けれど兄者がそれを止めた。
(;´_ゝ`)「上!!」
塀の上から、数人の男。
犇き合いながら登ってきたらしい。
ぐちゃぐちゃと満員電車のように、押し合い圧し合い一塊になって、
男たちは弟者の上に落ちてきた。
(´<_`#)「ちっ…!!」
(;´_ゝ`)「馬鹿、やめろ!!」
(´<_`;)「んな…っ」
棍を真上に振ろうとする弟者の背中を、兄者が引っ張る。
数人の大人の男が、上から落ちてくる衝撃。
いくら弟者が武道に秀でているとはいえ、一人60kg以上はある男が数人、
重力に従い頭上から落ちてくるのを、細い棍などでどうにかできるはずも無い。
兄者がその場から離れられないのを考えての行動だろうが、自殺行為だ。
弟者がバランスを崩して、横に転がった。
瞬時に顔を腕で隠した兄者の真横に、どさどさと男たちが降ってくる。
そのうちの一人は、真っ黒に染まっていた。
***
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