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僕はツンが大好きだ。
小さい時から、笑うのも、泣くのも、怒るのも、全部ツンが一緒だった。
だから、強気に見えて泣き虫で、憎まれ口でも優しくて、
怒った顔より笑った顔の方がとても可愛いのだと知っている。
小学校に上がった頃。
いじめっ子の上級生に食ってかかったツンは、大事なぬいぐるみを取られてしまった。
ツンのお母さんがくれた、大切なウサギのぬいぐるみ。
返しなさいよ、返しなさいったら。
そう言って、彼女は泣きそうになりながらも必死に彼らを追いかけた。
彼女より早くに泣きべそをかいていた僕は、ツンのぬいぐるみが
蹴られてぼろぼろになる様を、嗚咽しながら見るだけだった。
上級生が帰った後。
ツンはぐしゃぐしゃで泥まみれのウサギのぬいぐるみを抱きかかえて。
同じように泥まみれになり、涙をぼろぼろと流しながら、それでも懸命に僕に言った。
ブーン、けが、してない?
僕はツンが大好きだ。
泣いてる顔より、笑った顔の方が、とても可愛いのだと知っている。
もう誰にも傷つけさせないように、僕が守らなきゃいけないんだと、その時思った。
僕が空手を習い始めたのは、そのすぐ後だった。
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